もう1人の主役(35)

京大病院小児科に「楽しい時間」をプレゼントしていらっしゃるボランティアグループ
にこにこトマトさんのニュースレターに04年10月からへなちょこなコラムを書かせていただいています。
コラムのタイトルは「もう一人の主役」。神田さんがつけてくださいました(わーい)。

「きょうだいさんのための本」
新しい年が始まりました。しぶたねの2011年は、念願だったきょうだいさん向けの冊子を作成することができ、よい年になりました。
年2回のイベント「きょうだいの日」では、きょうだいさんが主役になって思いきりあそび、大事にされます。「あなたは大切な子ども」「あなたのこと大好き」という親御さんや私達の想いを子どもたちは上手に受け取り、本当に可愛い笑顔で返してくれます。
例えば頭をなでること、手をつなぐこと、ぎゅっと抱きしめること、大好きだとちゃんと言葉で伝えること…ささやかに見えることが、きょうだいさんにとってすごく大きな意味をもつことを子どもたちの笑顔から教わりました。
そんな小さくて大切なことを詰め込んだものをつくりたい、きょうだいさんが寂しい時、ひとりきりだと思う時、たくさんの人から注がれている愛情を確認できるものを渡してあげたいと思い、小さな冊子が完成しました。
冊子は、きょうだいさんへのメッセージと、親御さんや周りの大人の方と一緒に書き込むページ(例えば、きょうだいさんが生まれた時どう思ったか書いてもらったり、お互いに好きなところを書き込みあったり、クーポンをつくったり…)からできています。ふだんは伝えにくい気持ちを伝え合うきっかけになればと願っています。
 20年ほど前、きょうだい児だった私は、自分は必要のない存在なんだという気持ちが強く、自分がこの家にいてよいのか、両親の人生にいてよいのか、よくわかりませんでした。そんな時、母が書いた育児日記をよく読み返していました。私が生まれた日と、あと3日分しかない日記なのですが、父も、産まれた私の似顔絵と「おにぎりみたい」というメモを書き添えてくれていたりして、「だいじょうぶ、両親は私のことを好きなはず」と最後の自信をなくさずに済みました。
 冊子は、幼稚園から小学校低学年ぐらいの年齢のきょうだいさんを想定してつくってあります。でも、完成した冊子を手にとってくれた高校生や大学生のきょうだいさんは「これ今もらっても嬉しいと思う」と言ってくれました。自分は愛されていること、大切な存在なんだということ、言ってもらえてないまま大きくなったきょうだいさんもたくさんいます。
逆に、冊子を手に取った親御さんが「ああ、これうちの子もう大きいから使えないわ~」と言ってくださることがあります。年齢をたずねると10歳ぐらいだったりして、ああ、一度試すだけ試してほしいなと思ったりします。
「大好き」と言われて傷つく子どもはきっといないと思うのです。驚いたり、照れたり、うざがったり(笑)はするかもしれませんが、きょうだいさんがひとつも傷つかず、嬉しくなったり自信をもったりできるかもしれないことがあるなら、試してほしいのです。その時届かなかったように見える言葉が10年後に届いたりもします。