もう一人の主役(43)

京大病院小児科に「楽しい時間」をプレゼントしていらっしゃるボランティアグループ
にこにこトマトさんのニュースレターに04年10月からへなちょこなコラムを書かせていただいています。コラムのタイトルは「もう一人の主役」。代表の神田さんがつけてくださいました(わーい)。

2月16日、全国小児病棟遊びのボランティアネットワーク全国交流集会に参加しました。基調講演の安立清史先生のお話は私にとってとても新鮮で、最近の悩みに一筋の光が射したように感じました。
先生が紹介してくださったアメリカの病院ボランティアの現状は、「全米約5800の病院の75%にボランティア部門があり、専属のスタッフがちゃんといる」「全米病院協会の下にボランティアディレクターの専門組織があり、ボランティアのマネジメントや指導のための教育・研修を行っている」「ボランティアディレクターの認定資格がある」等々、想像を遥かに超えていました。
アメリカには病院ボランティアの標準モデルがあり、専従職員の方が各病院に数名いて、研修プログラムがあり、ボランティアをコーディネートする人たちがきちんと組織化されていて…日本とは医療制度や病院経営のシステムが違うという背景はありますが、ボランティアが病院にも社会にも認められ、誇りをもって安心して活動をできている、子どもたちがたくさんのボランティアとあそべていることは本当にすごいことです。
日本で病院にボランティアを導入する時、一番大きな問題になるのが「リスク」だとすれば、その論理に実績だけではなく(実績だと1回ミスするとだめになってしまう)、言葉の力で対抗することが必要なのではというお話にも感銘を受けました。長期入院している子どもの発達や心理的な課題の視点から見て、ボランティアを受け入れないことのリスクを考えてもらうため、病院にボランティアがいることがたくさんの人にとってプラスになると納得してもらうため、言葉、理屈を考えていく…ここ20年ほどで医療の世界は大きく変わり、さまざまな病院ボランティアも増えている、少しの努力で日本の病院ボランティアが大きく変わるチャンスが来ている、だからみんなでふんばって頑張りましょう、という言葉に、大きな力をもらったようでした。
「リスクを減らすため」という説明はいつも反論しづらく、とても正しいことのように聞こえ(正しいことではあるのですが)、リスクを減らす方向に進むことは誰にも反対されないのでどんどんそちらに引っ張られてしまうように感じることがあります…。でも例えばどんどんそちらに進むと、きょうだいは入院中の子に会いにいくことすらできなくなってしまいます。きょうだいが感染のリスクを運んでくる存在ではなく、当たり前に一緒に過ごせないといけない大切な家族の一員なんだとみんなが思えるように、感染の課題をクリアしながら、なんとかきょうだいのつながりが途切れないよう工夫していこうという流れになるように、進んでいくためのヒントをいただいた1日になりました。