きょうだいに病気の説明をする時の手がかり

きょうだいさんに病気の説明をしよう、と思う時、親御さんもきっと不安な気持ちでいっぱいだと思います。正解や秘訣があるわけではないのですが、大きくなったきょうだいさんや親御さんから教わってきたことを私たちなりにまとめてみました。まだプロトタイプで荒削りな文章で申し訳ないですが、入学シーズンを過ぎてしまいそうなのでいったん公開します。ご意見いただきながら改良していければと思っています。よろしくお願いいたします。
・説明をする時…きょうだいさんの不安の軽減(わからないことがあって不安だったよね)と、 疑問の解消(聞きたいことなんでも聞いていいんだよ)のための説明なんだよと伝えてあげてください。
まずは、戸惑いながらも闘病生活や環境の変化を小さな身体で乗り越えてきたきょうだいを讃えてください。病気や障がいをもつ子どもを支えてもらうとか、現状を理解して協力してもらうという目的のためではなく、今ここにある「きょうだいの不安や疑問」を受け止める時間になるといいなと思います。
・これまでの道のりを振り返って、不安や戸惑いがあったならその気持ちを受け止める時間にもなるといいなと思います。 「お母さんが急にいなくなって寂しかった」「おにいちゃんとあそべなくて悲しかった」 寂しかったんだよね、悲しかったんだよね、いっぱい頑張ったんだよね、と言葉にして渡してあげてください(できるだけ親御さんの罪悪感や自責につなげず…きょうだいのネガティブな感情を真正面から受け止めるのではなく、きょうだいさんの隣で一緒に抱えてあげるイメージで…)。
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いつでもすべて真正面からどすんと受け止めるのではなく(それが必要な時もありますが)、時には隣に寄り添い、きょうだいさんの言葉の奥の気持ちを一緒に探してみてください。
大変な日々の中で、周りの人の愛情がきょうだいさんに見えづらくなっていたかもしれません。きょうだいさんのことを大好きなこと、大切に思っていることも、この機会にぜひ伝えてあげてください。
・病気の説明をしようと思うと「伝える」ことに目が向きがちですが、伝えるよりも「聴く」ことに時間がたくさん必要かもしれません。 病気が自分のせいだと思ってしまっているきょうだいも多いです。あなたのせいじゃないよ、ということが伝わるとよいですし、自分のせいだと思っていてつらかった気持ち、怖かった気持ちも大切に聞かせてもらいたいです。自分も同じ病気になるのではという不安な気持ちを持っているきょうだいもいます。そうではないことが優しく伝わるといいなと思います。気持ちに「良い」や「悪い」はありません。どんな気持ちも大事な気持ちで、どんな気持ちも持っててOKです。
・聞きたいことは年齢によって変わっていきます。 例えば、小学生ぐらいまでの子どもは自分中心の世界で生きている思考の特徴があります。兄弟姉妹の病気よりも明日からの自分の生活のことが心配だと言っても、兄弟姉妹を思いやっていないわけではありません。 少し大きくなると、自分の子どもに病気が遺伝するのかということや、将来の計画などが心配になりながら、親御さんや病気をもつ兄弟姉妹に気をつかって聞きづらいということが出てくるかもしれません。いつでもなんでも何度でも聞ける空気をつくりながら(これは親御さんにとっては、「1回ですべて完璧に伝えなければ」と思わず、「続きはまた今度でいいか」と肩の力を抜いてOKということです)、時には医師や支援者など第三者の力を借りることもできます。
・「わからない」ことは「わからない」でだいじょうぶということを伝えてあげてください。他の人からの質問に答えられなかったことを「失敗した」「悪いこと」ととらえるきょうだいがたくさんいます。うまく言い返せなかった=病気をもつ兄弟姉妹を守ってあげられなかった、と、自分を責めるきょうだいも多いです。 病気の原因など大人でもわからないこともたくさんありますし、自分や家族の心を守るために「わからない」「お父さんお母さんに聞いて」「その話は聞かないでほしい」と答えてもよいことを伝えます。
・練習なしに上手に説明したり他の子どもの質問に対処できる子どもはなかなかいません。 小学校に上がる前など、他の子どもから病気のことを聞かれる可能性が高いとわかっている時は、前もって「作戦会議」をすることも、きょうだいの心を守る方法の1つです。 「作戦会議」には、練習の意味合いもありますが、親御さんが自分のことを考えてくれているという実感をもてること、これから先に不安や疑問をもつことがあった時に親御さんに聞いてもいいんだと感じられることに大きな意味があります。ここがきょうだいが踏ん張る時の心の土台になっていきます。
病気について伝えるポイントとしては、きょうだいの年齢にもよりますが、病名よりも「誰のせいでもないこと」「うつらないこと」「家族みんなで頑張っていること」が伝わるとよいのではと感じています。病気をもつお子さん向けにお医者さんや看護師さんが説明をしてくれているなら、それに合わせるとよいと思います(病気の兄弟姉妹には伝えていない重大なことをきょうだいだけに伝えてしまうと家庭内に「秘密にしないといけないこと」ができてしまい、きょうだいに負担がかかることがあります)。 説明は、子どもにわかる言葉で、例えば、頭の中に悪い塊ができたのでやっつけるの、「ち」をつくる工場がうまくはたらかなくなったの、など、工夫してみてください。市販されている絵本で子ども向けに病気を説明するようなものもありますし、国立特別支援教育総合研究所さんが作成しておられる病気別の支援冊子もとても参考になると思います。
https://www.nise.go.jp/portal/elearn/shiryou/byoujyaku/supportbooklet.html
病院によっては、病気のお子さん向けに紙芝居や絵本のようなものを使って説明されているところもありますので看護師さんや保育士さんにたずねてみてもよいでしょうし、また、可能なら、親御さんと病気のお子さんが説明を受ける時に、きょうだいも同席するという方法もあるかもしれません。
・病気のことを聞きたくないと思っているきょうだいもいます。無理をせず、きょうだいが話を聞きたいと思うタイミングを待ってみてください。
・意地悪を言ってくる子、悪意はないけど「なんでなんで」を繰り返す子、きょうだいがそんな子どもとの関係がしんどいこともあるかもしれません。その子ときょうだいだけの狭い世界だととてもつらくなるので、お母さんもいるよ、お父さんもいるよ、学校の先生に言ってみてもいいよ、と、世界を広げてあげたいなと感じています。同じように悩んだり困ったりしているきょうだいがたくさんいます。そんなきょうだいを支えたいと思っている大人もたくさんいます。みんなあなたの仲間だよ!
・しぶたねでは、きょうだいさんの担任の先生に、きょうだいのもちやすい気持ちと、うちの子はこういうことを悩んでいるので見守ってほしいということを伝えるためのシートを公開しています。 http://blog.canpan.info/sib-tane/archive/331
きょうだいさんの不安を少しでも軽くするために、きょうだいさんに、あなたのこと心配してるよという気持ちを伝えるために、お役にたてる部分があればどうぞ使ってみてください