「ファイザープログラム 心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援」で助成いただき、2019年度から「病気や障害のある人の「きょうだい」の経験共有の場「シブパネル」開発事業」を3年にわたってみんなで進めてきました。現在作成中のガイドブックに掲載しきれなかった情報を掲載していきます。
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「シブパネル」は、病気や障がいのある人の「きょうだい(sibling)」によるパネルトークです。
この投稿では、アドバイザーとして事業にご協力くださっている、明星大学人文学部福祉実践学科教授の吉川かおり先生に、「きょうだいの安心のために必要なこと」についてご執筆いただいたコラムをご紹介します。
きょうだいが安心を感じることができるとき、それはどのような時でしょうか。
一つには、自分の人となりや人生を受け入れてもらったとき、もう一つは、自分に影響を与えた「親や障害児者」についての体験や気持ちや考えを含めたあれこれを、共感的に聞いてもらえたとき、ではないかと考えます。
パネラーとなるきょうだいにとっての安心を、最初はスタッフ・モデレーター・パネラーの間で作り出し、さらにシブパネルという場では聴衆も巻き込んで作り出すこと。そのためには、モデレーターや聴衆が担う役割にも目を向ける必要があります。
加えて大切なことは、障害児者にとっての「障害」の位置づけと同様に、きょうだいにとっても「障害児者との暮らし」がその人の全てではない、という点です。障害児者にとって、(心身機能の)障害はその人の一部ではありますが、全てではありません。きょうだいにとっても、障害児者のいる家庭で育ったということは、その人を作っている要素の一部であって、その意味づけは人によって異なるのだということを、関係する者たちが理解していること(もしくは理解できるようになること)が求められます。
シブパネルという場は、パネラーの話を媒介として、パネラー自身と各聴衆、モデレーターとが交流する場でもあります。言語的なものだけでなく、非言語的なコミュニケーションも含めて、伝えてよかった・聞けてよかったと思える交流を生み出していくこと、それこそが「きょうだいにとっての安心」につながる道でありましょう。