京大病院小児科に「楽しい時間」をプレゼントしていらっしゃるボランティアグループ
にこにこトマトさんのニュースレターに04年10月からへなちょこなコラムを書かせていただいています。コラムのタイトルは「もう一人の主役」。代表の神田さんがつけてくださいました(わーい)。
弟と私(21)
大学に入った私はやっと触れられた福祉の世界が新鮮で、嬉しくて、わくわくしていました。先輩に誘われて、身体障害のある方の介助ボランティアにも参加するようになり、お家にお邪魔して夕食をつくったり、食事介助をしたり、車椅子を押して一緒に外出する活動にのめりこんでいきました。
弟に合わせた生活しかしてこなかった私は社会経験が驚くほど乏しく、人の集まるようなところにはほとんど行ったことがないし、電車もわからないし、ファーストフードのお店では注文の仕方からよくわからない…ぐらいのレベルで、最初の喫茶店での食事介助ではコーヒーのシロップもホットケーキのシロップも全部使い切ろうとして障害者の方を慌てさせたりもしました(家だと使う分しか出てこないのでわからなかったのです…)。
こんな調子なので、障害者の方の方が気を使って、いろんな場所に連れて行ってくれました。人の役に立ってみたいと思って始めたボランティアでしたが、車椅子を押しながら、電車に乗りながら、ごはんを食べながら…本当にたくさん笑い、人と関わることの楽しさ、すばらしさを教えてもらいました。
車椅子を押して外出すると、いろんな人に出会いました。嫌な思いをすることよりも、人の優しさ、あたたかさに出会うことの方がはるかに多く、「誰も弟や私達家族を助けてくれる人はいないんだ」と不信感でいっぱいだった私は目からうろこが何枚も落ちました。障害をもちながら、地域で暮らしていけるのだということも、将来弟の面倒をみるよう言われ、自分でもその選択肢しかないと思ってきた私の価値観を大きく揺るがせることでした。
楽しく充実した学生生活を送る一方で、1回生の私は本当によく眠りました。行き帰りの電車を何度も乗り過ごし、帰ったらまず3時間ほど眠らないと夕飯を食べる気力もなく、朝起きるだけで1日のエネルギーを使いきっているような…。
今振り返ると、いったん燃え尽きていたのだと思います。弟の病気がわかった中学時代から高校、大学受験まで、自分は病気ではないのだから誰にも迷惑をかけてはいけない、弟の分も頑張らなければいけない、と、プレッシャーと先の見えない不安と闘っていたことで、なんだか頭も体もへとへとでした。原因のわからない微熱が続き、たくさん眠り…なんと1年で4cm近く身長が伸びました。